【こんな症例も治りますシリーズ 633】 『 感染から長時間経った犬レプトスピラ症 』も 迅速に適切な診断をおこないます

↑ 上の写真は、レプトスピラ菌の電子顕微鏡像です。

■ 実は、この菌は、らせん型の菌ですので『梅毒トレポネーマ菌』と仲間の『スピロヘータ属』に入ります。

■ ネズミの尿に存在しています。 ネズミがいなくても、尿は残っていますので『川遊び』は危険です。

 

参照サイト:

https://00m.in/llfY4

 

 

犬 ミックス犬 8歳 オス(去勢手術済み)

 

 

【 他院で腎、肝臓障害があり、コントロールできない 】という事で来院されました。

 

 

◆◆ 血液検査を行ってみると、黄疸が重度に出ており、肝酵素値、腎数値も計測できないくらい高値になっています。

 

 

■ 画像検査を行ってみると、腹腔内に腫瘍があったり、胆嚢破裂していたりといった明らかな『 原因疾患が見当たりません 』。

 

 

 

 

■ 飼主様から、問診でこの子の状況を詳しくお聞ききしてみると、近所の川遊びが好きで川の水も飲む、という事でした。

 

 

 

◆◆ 予防接種歴は、混合ワクチンはしっかり接種しているのですが、『 5種混合ワクチン 』を毎年打っていました。

 

 

 

◆◆ 情報と、この子の今の症状や各種検査情報から、『 レプトスピラ感染症 』を強く疑います。

 

 

 

■ レプトスピラとは、細菌で、人を含め哺乳類に感染する『 人と動物の共通感染症(ズーノーシス) 』です。

 

 

 

■ レプトスピラには様々な種類があり、その中でも7つの血清型を診断した獣医師は、県の家畜保健衛生所に届出の必要がある重要な感染症です。

 

 

 

◆ レプトスピラは齧歯類(ネズミなど)が保菌しており、尿中に排泄し、土壌や河川を汚染します。 降雨や洪水が多い時期に、感染が増加する傾向があります。

 

 

 

★★★ ここで一つ覚えましょう。 【 ネズミのオシッコは危険! 】という事を『 合言葉にして 』、川遊びや、レジャーでワンちゃんを山川や海・湖に連れていく飼主様、直ぐに混合ワクチンを『 5種ではなく、7種以上 』に変更して追加接種してください。

 

 

 

◆◆◆ 全国の県別届出数は、三重、福岡、宮崎がトップで西日本・南日本に多く、神奈川県では2011年一件、2014年一件、2019年一件、2020年二件、2021年一件、2022年三件、届出がでています(農林水産省・監視伝染病の発生状況より)。

 

 

 

■ 2023年は、神奈川県の非公式な情報では、

 

1)横須賀市   1件

2)横浜市都筑区 1件

3)横浜市泉区  1件 の計3件が、既に発生し届出ている、との情報です。

 

 

 

■ 今回は、4)横浜市瀬谷区 1件(和泉川 阿久和西エリア)です。

 

 

 

★ この伝染病が、神奈川県で微増しているようです。

 

 

◆◆ 犬のレプトスピラ症は、

 

 

 

■ 一般的な症状は、発熱、食欲不振、元気消失、嘔吐、脱水、重篤な状態では粘膜の潰瘍形成、粘膜出血、眼のぶどう膜炎、黄疸、腎機能不全、肝機能不全を引き起こします。 病気の進行は早く、直ぐに亡くなるケースも多いです。

 

 

 

■ レプトスピラの血清型によって重症化する場合もありますし、感染個体が免疫不全になっている場合に重症化する場合もあります。

 

 

■ 診断は抗体検査ですが、ワクチン接種による抗体の上昇と区別がつかないため、より確実な方法としてはPCR検査(遺伝子学検査)による方法が良いと思われます。

 

 

■ 治療としては、強力な体力回復の支持療法と、軽度の場合には抗菌薬の経口投与、重症の場合にはストレプトマイシン系、ペニシリン系抗生剤を静脈投与します。

 

 

 

 

◆◆◆ この子は、1週間も積極的な加療が加わらない状態で上診してきた『 重症例 』であり、入院下で治療、投薬を行いましたが、腎臓病の末期である『 乏尿性腎不全 』に既に陥っており、残念ながら急変してしまいました。

 

 

 

■ しかし、来院時に担当した獣医師が、直ぐに『 仮診断名を伝えて、手際よく検査と診断をおこなった事によって 』、飼主様からはご愛犬が急逝した後も『 多くの感謝を頂きました 』。

 

 

 

■ 正確な診断は、外注検査の結果によって、後日になりましたが『 レプトスピラ症 』であると確定いたしました。

 

 

 

◆◆ 近年、温暖化が進んでおり、南日本・西日本で主に見られた感染症が、東日本にも見られるようになってきています。

 

 

 

★★★ 重ねてのお願いになりますが、特に川辺や水辺に行かれる飼い主様は、特に理由がない限りは『 7種混合ワクチン以上 』の接種をお勧め致します。

 

 

 

★★ 今回の飼主様がおっしゃっていた事をお伝えします。

 

『 犬に川遊びをさせている飼主さんに、レプトスピラ症の怖さを伝えて欲しい 』

『 かかりつけ医からは、5種混合ワクチンを勧められたが、動物病院は7種混合ワクチン以上を勧めて欲しい 』

『 人間にも影響する病気なら、保健所なども川遊びなどが危険である事を伝えて欲しい 』

 

 

★ 本当にそうだと思います。 皆さんはどう思われますか?

 

 

 

 

※ 5種ワクチンしか打たないで良いよ、と言って情報発信をしている方々は、これらの最新情報をご存知ないのだと思います。 正しい新しい情報を基準にして、ご愛犬のためにも、ヒトのためにもご判断下さい。

 

 

 

獣医師 増田正樹

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